婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「どういうことだ? 分るように話せ!」

イライアスは依然として怒鳴り続けている。

「王子が出会った女性は、異界で身分の高い姫君だったのですよ」

「魔物たちの姫というわけか? これは面白い」

馬鹿にしたようなイライアスを無視して、ルーサーは続ける。

「王子は彼女に深い興味を持ちました。しかしあくまで興味で恋ではなかった。一方で異界の姫は王子に恋をして、こちらの世界で彼と共に過ごすことを願ったのです」

「俺の先祖が魔物と結婚したと言うのか? これは傑作だ」

「結婚していたらよかったんですけどね、王子は姫を研究材料にしただけでした。恋をしていた姫は利用されていたことになかなか気づかず、理解したときには力のほとんどを失っていたのです。しかもお腹には子供がいた」

ルーサーはなにを思っているのか目を伏せた。

「その子供はどうなったのです?」

オーレリアが問いかけた。ルーサーはちらりと彼女を見て、薄く笑った。

「生まれましたよ」

「姫は?」

「子供を生んだあとすぐに亡くなりました。力を使い果たしたと言われていますね」

なぜルーサーはここまで詳しいのだろう。そう考えて気がついた。

先ほど彼は自分を王家の子だと言っていたではないか。

(まさか……)

ごくりと息を飲むアレクシアの前でルーサーは続ける。
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