婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「待て、それは駄目だ。王都を追放されてこんな辺境に来るんだ。きっと心細いだろう。できる限り温かく迎えてやってくれ、暮らしに不自由しないように気を配ってやってほしい」

メイナードがそう言うと、ルーサーは嬉しそうに目元を和らげた。

「やっぱりメイナード様は優しいですね。俺はよい主君に巡り合えて幸運ですよ」

「……なにを言ってるんだ」

「おや、照れてます?」

「照れてない! 報告が終わったなら仕事をしろ」

メイナードは立ち上がり、ルーサーに背を向けて執務机に戻る。

「承知しました。早速アレクシア様の部屋を整えてきますよ。アークライト家ではなにも用意していないようだったので、王都の最先端のドレスを山ほどと、熟練の家具士による調度品を一式買ってきましたから。かなりの金額の請求書が後日届くと思いますので、承認よろしくお願いします」

「……ドレスか。俺では気が回らなかったな、助かる。ほかにも必要なものがあるなら用意してくれ。金ならいくらかかっても構わない」

「はい。ではそろそろ行きますね。あ、姿絵は置いていきますので」

ルーサーはメイナードがなにかを言うより前に、足早に部屋を出ていった。

「あいつ……」

メイナードは呆れたように呟いてから、アレクシアの絵に視線を落とし、切なさを覚えながら目を細めた。

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