婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
まるでアレクシアが悪だとでも言いたそうに、恨みの目を向けてくる。アレクシアは内心溜息を吐きながら、パメラを見つめた。

「薄情なのはどちらでしょうか」

いつになく冷ややかなアレクシアの声に、パメラがぎくりと立ち止まる。

「血は繋がらないながらも家族になった私に、あなたはいつも冷たかった。ルイの母上にこんなことを言うのは嫌でしたけど、あなたを家族とは思っていません。情など一切ないのでオーレリア様の件で頼られても迷惑です。二度と私に関わらないで」

自分でも驚くほど、突き放す冷たい言葉だった。けれどそれだけアレクシアは怒っていたのだ。

もうずっと長い間。割り切ったつもりでいたけれど、心の奥に消せない怒りの火種があったのだ。

(でも、これでもう忘れるわ)

そう決意して、実の父に視線を送る。

久しぶりに見た父は小さく頼りなさげに見えた。

幼い頃から父親らしいことをしてくれた覚えはないけれど、それでもたったひとりの父だと思い、慕っていた時期もあった。

「お父様。今までありがとうございました」

「アレクシア……」

「こんなことになってしまい残念です。これからはルイの負担にならないよう振舞ってください」

この場にいたのだ。恐らく父は王太子たちの企みに少なからず関わっている。

そう遠くないうちに、調べが入り捕らえられるかもしれない。

罪人になる父に会うのはこれで最後かもしれない。

「さようなら、お父様」

アレクシアは最後の言葉を父に送った。少しだけ胸が痛んだ。
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