婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
タウンハウスから出て、夜の街を馬でゆっくり進む。

慣れない乗馬も、暗闇もメイナードの腕に包まれていると少しも怖くなかった。

馬は街を出て郊外に向かう。しばらくすると辺り一面、白い光に溢れた草原に辿り着いた。

「ここは?」

幼い頃から王都で暮していたが、こんな場所は初めてだ。

「王都の外れにある公爵家の私有地だ」

「私有地だから近づいたことがなかったのですね、白い光がとても綺麗……」

アレクシアは目を凝らした。よく見ると光の正体は一面の白い花だった。

「これは……デルフィの花?」

「そうだ。この花は異界の者が苦手とする花なんだそうだ。口にすると死んでしまう。だが怖いのは彼らにとって抗いがたい匂いを放っていて、引き寄せられずにはいられないことだそうだ。だから昔はサザラント城の庭一面に植えて育てていたそうだ」

「魔物をあえて城に呼び寄せる為にですね。そうすれば討伐しやすいし領民を守りやすいから……それにしてもこの花にそんな効果があっただなんて。そう言えば、城に庭に一凛咲いているところを見ました」

あれは初めて魔獣を目にした日だ。

「あの鳥は、デルフィに惹かれたのでしょうか」
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