婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
ルイの忠告通り、楽観的になり過ぎないように気をつけよう。

(公爵様はどんな方なのだろう。姿絵もないし想像できない。でも本当に噂通りの姿でも驚いたりしないようにしなくては)

車窓に流れていく景色を眺めながら、アレクシアはこれから訪れる公爵との対面へ思いを馳せた。

旅は至って順調で、王都の屋敷を出て五日後には、ブラックウェル公爵領に到着した。

物々しい装備の公爵家の騎士が、領地の境界まで出迎えに来てくれていた。

これまで護衛してくれたアークライト侯爵家の家人たちとは別れ、ディナと共に公爵家が用意した馬車に乗り換える。

その後は最低限の休憩を挟みながら、まっすぐに公爵の住むサザラント城を目指す。

馬車に乗っているだけのアレクシアも疲労を覚えるほどの強行軍だったが、急いだ甲斐があり二日で到着した。

車寄せで案内役の若い男性に出迎えられ、城の敷地を徒歩で進む。

アレクシアは周囲に視線を巡らせた。

王都の優美な城とは違い、無骨な造りだ。

高い城壁には見張りの兵士が等間隔に並び、警戒している。

貴族家の美しさを追求する庭園はなく、馬車でも乗り付けられる石畳が続いていた。

東屋のような場所で指示された通り待っていると、にわかに騒がしくなった。

「公爵閣下がおいでです」

男性の言葉に、アレクシアは頭を下げて公爵の到着を待つ。
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