婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
長身で線が細い。珍しい緑色の髪と同色の瞳が印象的だ。

「家令のルーサーだ、不明な点があれば、なんでも彼に聞くといい」

「よろしくお願いします、アレクシア様」

ルーサーは、アレクシアを見定めるようにしてから、深々と頭を下げた。


短い対面が終わると、メイナードは踵を返し足早に去っていった。

残されたアレクシアにルーサーが声をかける。

「アレクシア様、お部屋にご案内いたします」

ルーサーの案内で、ディナと共に古めかしい石造りの城の中に入る。

メイナードと同様に長身のルーサーだが、かなりゆっくりとした歩みだ。おかげで周囲を観察する余裕があった。

その様子を見たルーサーは、歩きながらではあるが、簡単に城の説明をしてくれた。

「サザラント城は、元はこの地方を守る為の要塞でしたが、二百年ほど前に、公爵の居城となりました。それ以降三度の大がかりな改装と補強工事を経て今に至ります」

「歴史のある城なのですね」

しかし首都の王宮とは違い華やかさがまったくなく、元々要塞だったというだけあって少し複雑な造りをしている。

(各部屋の位置を覚えるのにひと苦労しそうだわ)

後でルーサーに城の見取り図のようなものがあるか聞いてみよう。

回廊を進み、階段を上り、ようやく到着したのはそれまでよりも明るい白壁の棟だった。
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