婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
オーレリアはアレクシアより一つ年上の十七歳で、黒髪に翡翠の目をした美しい人だ。上昇志向が強い努力家で、遠い外国の言葉すらも自在に操る才女。

未来の王妃に相応しいと言える女性だが、父親が貴族としては身分の低い子爵な為、王太子の婚約者になるのはなかなか難しい状況だった。

けれどイライアスはついに動き、オーレリアを正式な妃にする為に、アレクシアに婚約破棄をつきつけた。

(ここまでは予想していたのだけれど)

侯爵家当主である父を通さず、いきなりアレクシアに婚約破棄を告げて来る非常識さには少し驚いたものの、婚約破棄自体はアレクシアにとっても歓迎することだった。

問題はその後だ。無関係のブラックウェル公爵との縁談がなぜ突然出て来たのか。

内心首を傾げていると、イライアスが得意げに胸を張る。

「オーレリアが王太子妃になるのだから、お前の居場所は、もう王都にないということだ」

「あの、おっしゃる意味が……」

王太子の婚約者ではなくなったからと言って、なぜ居場所がなくなるのだろう。

今回の婚約解消についてアレクシアには瑕疵がない。イライアスの心変わりが原因だと、誰が見ても明らかだと言うのに。

「心当たりがあるはずだろう。お前は卑劣な手段でオーレリアを排除し王太子妃の地位を手に入れようとした悪役令嬢なのだからな!」

アレクシアは大きく目を見開いた。
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