婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「傷ついた姿を私がこの目で見たのだから間違いない。その数々の仕打ちについて公の場でお前を裁くこともできたのだ。しかしオーレリア本人が大事にしたくないと言っているから、この程度の罰で済んでいる。お前は彼女の心の広さに感謝し、罪を償え」

 イライアスの口調は厳しく、アレクシアを許すつもりがない意思がひしひしと伝わって来る。

「殿下、誤解です。その加害者は私では……」

「黙れ! 弁解を聞くつもりはない」

 誓ってオーレリアを害すような真似はしていない。彼女がなんらかの被害を受けていたこと事体、アレクシアは今初めて知ったくらいだ。

 しかしイライアスはよりいっそう冷え冷えした視線でアレクシアを睨みつけた。

「見苦しく足掻くな。私を丸め込めると思っているのなら甘い考えだ」

「いいえ。そのようなつもりはありません、ですが……」

「しつこい黙れ! これはもう決定事項だ。お前はブラックウェル公爵に嫁ぎ、公爵領で一生を過ごせ。王都に戻ることは許さない」

「……一生?」

思いがけない言葉に、アレクシアはごくりと息を呑んだ。

自分は王都から追放されるのだと気づいたからだ。

なぜかは分からないけれど、イライアスは民が噂するようにアレクシアがオーレリアに危害を加えたと信じ込んでいる。

誰もが恐れるブラックウェル爵の元に嫁げという命令は、アレクシアに対する罰だったのだ――。
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