婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
理不尽とも言える命令に動揺しながら、王都貴族街に建つアークライト侯爵家の屋敷に戻った。

突然のことばかりで、頭の中は混乱している。

とにかく落ち着かなくては。

自室でひと息つこうとしていると、慌ただしい足音と共に、アレクシアと同じ金髪碧眼の小柄な少年が、勢いよく扉を開き駆け込んできた。

「姉上!」

「ルイ、ただいま帰りました。ずいぶん慌てているけど、どうしました?」

四才年下の弟ルイの、いつになく混乱した様子に驚きながら問う。

彼はアレクシアが座っている長椅子の前で立ち止まり、上擦った声を出した。

「先ほど王宮から使者が参りました。姉上を王太子殿下の婚約者から外し、ブラックウェル公爵に嫁がせると!」

「もう知らせが? なんて手回しがいい……」

「で、では事実なのですか? 一体なにがあったのです!?」

「説明するから落ち着いて。お茶を飲みながら話しましょうね」

混乱する弟を宥め椅子に座るように促してから、手ずからお茶を淹れる準備をする。

温めたカップにゆっくりとお湯を注ぎながら、アレクシアは溜息を吐いた。

(王太子殿下は、私を一刻も早く追い出したいのだわ)

オーレリアに会って誤解を解きたかったのだけれど、そんな猶予は与えてくれそうにない。
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