婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
『オーレリアは下賤な噂など知らないようだな。ブラックウェル家の領地は公爵といってもとんでもない僻地にあるんだ。しかも城の近くには魔物が出る森があり常に危険にさらされている。さらに公爵本人は呪われている。酷いだろう? あの女には似合いの嫁ぎ先だとは思わないか?』

イライアスは得意げに目を細めた。

『で、ですがアレクシア様を危険な地方に送るというのは……アークライト侯爵様が許さないのでは?』

優しいオーレリアはあまり気が乗らないようだ。けれどイライアスは意思を変えるつもりはなかった。

父である国王を説得する自信はある。アークライト侯爵とアレクシアの母の生家リリー子爵家が口出ししてきたら多少面倒だから王命を出すようにうまく頼み込もう。

問題はメイナードだが、幸い向こうにはイライアスの手の者を送り込んである。慎重に動けばなんとかなるだろう。

まずは、アレクシアを呼び出して……オーレリアのなにか言いたそうな気配を感じながらも、イライアスは、断罪の日を思い浮かべ胸を躍らせていた――。



それからは呆気ないほど事がうまく運んだ。

心配していたメイナードはとくに異議を申し立てることなく、王命ゆえか侯爵家と子爵家からの反対もなかった。

ひと月も経たずに、アレクシアとメイナードの婚儀は終了したのだ――。
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