婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
応接間ではオーレリアが優雅にソファーに座っていた。
イライアスの贈った深紅のドレスがよく似合っている。
「オーレリア、待たせたな」
「イライアス様、ごきげんよう」
オーレリアは、近ごろますます美しくなっている。
イライアスは彼女の隣に腰を下ろし、ほっそりした肩を抱き寄せた。
「喜べ、あのふたりの婚儀が無事に終わった。これでもう王都に戻ってくることはない」
オーレリアは大喜びすると思っていた。しかし彼女は、イライアスからさり気なく体を離して目を伏せる。
「そうですか」
「罪悪感でもあるのか? オーレリアは優しいからな、だが気にすることはないこうなったのは自業自得なんだからな」
イライアスは再び彼女を抱き寄せた。
「自業自得とおっしゃいましたが、メイナード様には関わりのないことでした」
「いや、あいつもアレクシアと同じだ」
「……イライアス様はメイナード様がお嫌いなのですか?」
「ああ」
オーレリアの問いに、メイナードは迷わず答えた。
「顔を見るのも忌々しい、もっともあいつは、呼び出しても王都には出てこないがな」
それでも存在していると思うだけで不快だった。
イライアスがメイナードを初めて見たのは、いつだったか。
覚えていないが、物心がついた頃には、皆がメイナードを褒めていた。