婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
あらゆる面で優れた従兄だった。

ブラックウェル公爵家の特徴と言える黒髪に、オールディス王家の金の瞳が美しいと多くの人々に褒め称えられていた。

その名声がもっとも高まったのは、戦勝時期だ。

多大な活躍をして帰還した彼を、民や貴族は熱狂して迎えた。

王太子であるイライアスよりも、遥かに人々に愛されていたのだ。

許せなかった。イライアスだって戦に出ればメイナードより活躍したはずだ。

ただ次期国王という身分と、年齢の問題で出陣できなかっただけだと言うのに。

不満で仕方なかったが誰もイライアスの怒りを理解してはくれなかった。

それどころか、次期王にはメイナードこそ相応しい、などと言う者まで現れたのだ。

誰かがメイナードを褒める度に憎しみが募っていった。

だから呪いにかかり領地に引っ込んだと聞いたときは、快(かい)哉(さい)を叫んだ。

一生、辺境で魔獣対峙に明け暮れて死んでいけ。決して口には出さなかったが、そう思い続けていた。

イライアスに対して、冷めた目を向けていたアレクシアも運命を共にすればいい。

ふたりの苦境を想像し、満足していたイライアスの耳に、小さな声が届く。

「メイナード様がお気の毒ですわ。私たちのために魔獣と戦ってくださっていると言うのに。奥方様には支えになるような優しい女性が相応しかったのです」
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