婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「とんでもない。薬作りは公爵家にとっても重要なことですから。部屋の外にも護衛を配置しますので、安心して作業に専念してください。困ったことがあれば、そこのふたりに申し付けてください」

ルーサーは騎士ふたりをちらりと見遣りながら言う。

「分かりました」

「では、失礼いたします」

ルーサーが部屋を出て行くと、アレクシアはデイドレスの袖をまくった。

(がんばろう! たくさん薬を作ったら旦那様も喜んでくれるかもしれない)

「そっちの作業台を自由に使っていいよ」

「ありがとうございます」

専用の作業台ももらえたので、はかどりそうだ。

「ディナ、がんばりましょう!」

「はい、こうなったらとことんやりましょう!」

ディナもついにやる気になってくれたようだ。久々の仕事にふたりとも熱中した。

薬作り一日目。時間は瞬く間に過ぎていき、あっという間に夕方になった。

休憩時間には、マナカと騎士とおしゃべりをして、少しだけ仲よくなれた気がする。


それからあっと言う間に半月が過ぎた。

アレクシアとディナは作業場での時間にすっかり馴染んでいた。

マナカはもちろん交代の騎士とも打ち解けて、忙しいながらも楽しく働いている。

ある日、熱湯で煮詰めた薬草が冷めるのを待っているときに、マナカが思いついたように言い出した。
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