婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「ねえ、今度ふたり合作の薬を作ってみないか?」

「合作?」

「そう。シアのリリー家直伝の技術もすごいけど、それに私が出身のの隣国の手法のいいところを合わせてみたら面白いんじゃないかと思って」

マナカはアレクシアの名前が長すぎると、いつの間にか〝シア〟と呼ぶようになっていた。

騎士たちは無礼じゃないかとハラハラしていたようだが、愛称で呼ばれた経験がないアレクシアにとって、くすぐったくなるような嬉しいものだった。

「たしかに面白いかも。意外な付加効果が生まれるかもしれないし」

乗り気のアレクシアに、マナカは満足そうにする。

「それにシアの治癒魔法も組みあわせたら、もっとすごいものができるかも。よしとりあえずお互い構想を練って、よさそうなものの試作品を作ってみよう」

「ええ!」

(楽しそう! それにすごい効果の薬ができたらみんなが助かる)

メイナードとブラックウェル公爵家の役に立てたら嬉しい。そう思うとウキウキしてきた。

嫁いできてそろそろひと月になる。イライアスに追放を告げられたときはどうなることかと思ったが、むしろ実家での生活よりも、毎日が充実していた。

サザラント城の少数精鋭の家臣たちは皆人柄がいいし、なによりも特技を生かし誰かの役に立てるというのは、アレクシアにとって喜びになった。
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