婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
メイナードとの関係が夫婦とは言えないことについては気になるけれど、こればかりは夫の気持ち次第なのでどうにもできない。

マナカと協力しての新薬作りについては試行錯誤が続いていた。

なかなかうまくいかないけれど、なにかに夢中になる時間は楽しい。

いいアイディアを考えながらも、日々の薬作りはしっかり行っていた。

決まって作るものは、傷薬と疲労回復薬だ。

効果はそこまで高くないものの、素材と手間が少なくてよいものを大量に生産していた。

ルーサーが言うにはでき上がるとすぐに間の森近くに建つ見張り砦に届けられるとのこと。

怪我をしている騎士が大勢いるので、とても役に立っていると言われた。

そうやって褒めてもらうとますますやる気になって、仕事に熱が入る。

ルーサーに作業場を使う時間を決められていなければ、眠る時間も忘れて薬作りに熱中していたのかもしれない。

「アレクシア様、お迎えに上がりました」

「え?」

突然近くから声がした。アレクシアがはっとして顔を上げると、いつの間にかルーサーが作業台の向こうに佇んでいた。

「ルーサー……もうそんな時間?」

かなり集中していたのか、時間の感覚がおかしくなっていた。

驚くアレクシアに、ルーサーが頷く。

「はい。ずいぶんと精がでますね」

ルーサーが作業台の上に所狭しと並ぶ薬草と器具に視線を向けながら言う。
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