婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
顔を合わせるのは半月ぶりだ。にわかに緊張がこみあげて、冷や汗が流れる。

メイナードは応接間のソファーに腰を下ろしていた。

いつも通りの仮面と肌を隠す衣装。

ルーサーに促されて正面の席に座る。アレクシアのために用意してくれていたのかテーブルの上には、飴色のお茶が注がれたカップがふたつあった。

「突然呼び出してすまなかった」

ルーサーが退出するなり、メイナードの方から声をかけてきた。

「いいえ、大丈夫です。お話があると伺いましたが」

少し素っ気ない返答な気もするが、あまり馴れ馴れしくするのもよくない気がする。

(旦那様との距離がうまくつかめないわ)

「薬を作っていると聞いた」

「はい、城内の作業場を使わせてもらっています」

アレクシアはゆっくり言葉を選びながら答えた。

(薬作りを反対されるのかしら)

一応、公爵夫人である。

世間体を考えれば、アレクシアが作業場に出入りしたり、騎士たちと気軽に会話をするのはよくないだろう。

(でも、辞めたくない)

ようやくできることが見つかったのだ。マナカとも親しくなり、これからというところなのに。

なんと言えば、見逃してもらえるのか。

自分の手元に視線を落としながら、あれこれ考えていると、メイナードが動く気配を感じた。

顔を上げたアレクシアは、驚きに目を見開いた。

「ありがとう」

「だ、旦那様?」
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