婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
メイナードがアレクシアに対して、深く頭を下げたのだ。

(な、なんで?)

わけが分からない。いったいどういう反応をすればいいのか。

アレクシアの動揺に気づいていないであろうメイナードは顔を上げ、口を開く。

「あなたの尽力に感謝する」

「え……」

「前線で戦う騎士たちの多くは、常日ごろ傷を抱えている。しかしあなたの薬でかなり苦痛が緩和できている」

メイナードは至極真面目に、前線の兵士たちの様子を語り出す。

彼の話によれば、最近とくに魔獣の出現が増えており、戦う機会が多くなっている。そのためアレクシアの薬は大活躍しているとのことだった。

ひと通り話し終わると、メイナードは改まった様子でアレクシアを見つめる。

仮面越しで表情は見えないものの、彼が自分に悪い印象を持っていないようなのは、感じ取れた。

「今回の件の礼をしたい。希望のものがあればなんでも言ってくれ」

「欲しいものですか? いえ、とくには……」

元々それほど物に対する執着はないうえに、突然聞かれても答えられない。

「遠慮は不要だ。王都でしか手に入らないものでも、大丈夫だ。なんでも言ってくれ」

メイナードはやけに熱心だった。

(どうしてこんなに贈り物をしたがるのかしら)

褒美だとしても、ルーサーに命じて適当に手配すればいいことなのに。
< 87 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop