政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
「ちゃんと温まったか」
 寝室の扉を開けると、ふたりで寝てもまだ余裕があるキングサイズのベッドの上で、柚子の夫、朝比奈翔吾(あさひなしょうご)は本を読んでいる。
 そして柚子に気が付いて、優しく微笑んだ。
「うん……」
 柚子は答えて、手をもじもじさせる。
 翔吾が本を置いて、ゆっくりと腕を広げた。
「おいで、柚子」
 これがふたりの合図だった。
 柚子はこくん頷いて、ためらいがちにベッドに上がる。そしてすぐに、大きな腕に包まれる。
「ん……」
 これ以上ないくらいの優しいキス。
 ふわりと触れて、一度離れて。柚子の反応を確かめるように、そっと中に侵入する。そして、丁寧に柚子の中を刺激する。
「ん」
 柚子の胸に幸せな想いが広がってゆく。今自分は、愛しい人に触れられている。
「ん……」
「柚子……大丈夫か」
 でもすぐに、優しく声をかけられて、現実の世界へ引き戻される。
 そうだふたりは愛を交わしているのではない。
 ただ義務を果たしているのだ。
 夫婦としての義務を。
「怖くないか、大丈夫?」
 だから彼は、いつもこんな風に確認をする。
 愛し合っている夫婦なら無用なはずのこの確認を。
「だ、大丈夫」
 答えると、安堵したように微笑んで彼はまた優しいキスを繰り返す。
 そしてどこか遠慮がちに柚子の身体に触れ始める。
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