政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
 幸せな夢を見ていた。
 大好きな翔吾の手が何度も何度も頭を撫でてくれている。温かい腕に抱かれて、なにも心配ごとのない幸せな結婚生活を送っている夢だった。
「……ず、柚子」
 優しく呼びかけられて、柚子はゆっくりと目を開ける。明るい中に、自分を覗き込む翔吾がいた。
 柚子はぼんやりとしたまま、瞬きを繰り返す。
 大きな手が頭を撫でてくれている。
 気持ちいい、夢じゃなかったんだ。
 でもそう思った時、柚子の意識は現実に戻る。パチリと目を開けると、ベッドの中だった。
「あ、あれ……? 私……」
「おはよう」
 翔吾が微笑んだ。
 寝室の大きな窓からは朝日が差し込んでいる。
 見るともう彼はスーツを着ていて、出かける直前といった出立ちだ。
 しまった、寝過ごした。
「あ、ご、ごめんなさい……!」
 望まれた結婚ではなかったにしろ、やることはやらなくてはいけないと、毎日朝ごはんは作っていたのに。
 柚子は慌てて起き上がろうとする。
 それを翔吾が止めた。
「いいから、まだ寝てるんだ。昨日は夜遅くまで起きてたんだろう」
 そう言って掛け布団をかけ直す。そして眉を寄せた。
「柚子、昨日の夜、ソファで寝てたんだぞ。先に寝ててくれって言っただろう。ダメじゃないか」
「……ごめんなさい」
 柚子はしょんぼりと眉を下げる。
 彼はいつも柚子に先に寝るように言う。
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