下弦の月
土曜日の仕事終わりに、




部長の送別会と俺の歓迎会が、開かれた。





幹事は、水上で気を使いながら動き回っている。




この一週間で、彼女の色んな面を知った。




噂通りの頑張り屋で、仕事にもミスがない。



後輩の面倒見もいい。




取引先に一緒に挨拶に行けば、信頼されていて。




中には、彼女だから取引したという病院もあるらしい。





そんな彼女との距離は、少しずつ縮まっているように思えた。







酒があまり強くない俺は、その席を抜け出し。




外の風に当たっていると、





「ここに居らしたんですか、探しましたよ?」





綺麗な笑顔の彼女が立っていた。





「ああ…水上こそ、こんな所に居て大丈夫なのか?」





「落ち着きましたから…」





「そうか、疲れただろ?少し、休んでから戻れよ。」





入り口横の木のベンチ、俺の座っている横を叩くと。




失礼します。とそこに腰を下ろした。



「あの…部長?聞いて見たかった事があるんですけど、聞いてもいいですか?」





「答えられる内容の質問なら受け付ける。」





「う~ん…わかりませんが、部長は過去に約束した女性とか居ないんですか?」






その、質問で前世のあの女を思い出した。





「そうだな…かなり昔に居たよ。」





「かなり…昔?」





「ああ…」





「もし良ければ聞かせて下さい?」






今まで、誰にも話すことのなかった前世の記憶を……




水上に話し始めた。
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