下弦の月
俺はな……前世の記憶を持って生まれて来たみたいなんだ。







新撰組副長 土方歳三の生まれ変わりなんだろうな。





幼い頃から、箱舘戦争で死ぬまで全ての記憶が鮮明にある。





だが、記憶にはあっても……どうしても、




思い出せない事がある。





それは、未来から来たという女の名前と顔。





その女と恋に落ち、




お前の時代て逢おう。




と……誓ったはずなのにな。





死ぬ間際に、





約束は必ず、守る。





と……言ったはずなのにな。







前世の俺が生きた時代の背景も、



出会った全ての人も覚えているくせに、





その女の名前や顔だけじゃない、



声すらも覚えていない。









男として性や恋愛ってモノがわかるようになってから、




その女を探そうと、かなりの数の女と遊んだが。




まだ……出逢えてないんだ。





なんか、違う気がしてな…





前世の俺が、唯一…心を許した女で愛おしかったんだよ。






だから、また逢いてぇんだ。
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