下弦の月
黙って話を聞いてくれていた彼女は、




なぜか涙を流した。






「どうして…泣く?」





「……切ないな…って思っただけ…です……」





下を向いて、溢れ落ちる涙を顎に手を添えて。




上を向かせて拭うと、






「…部長…その子は…きっと、待ってますよ?いつか必ず…思い出します、部長がそれだけ想ってるんですから。」






重なる瞳をそのままに、そんな事を言われて。




だと…いいな。と答えて、月を見上げれば下弦の月が眩しく感じた。






「部長…泣いたりしてすいません…」




唐突に謝られて、




気にするな。と頭を撫でれば、笑顔を返した。









それからーーー、





店内に戻って、暫くすると。




お開きとなり、




二次会へ行く。という面々に断りを入れて、




店の外で別れた。





「部長!」





大通りに出て歩いていた俺を、水上に呼び止められ。





「幹事だろ?二次会、行かなくていいのか?」





「はい、佐藤に任せて来ましたから。」





「そうか…だが、あんまり飲んでねぇだろ?」





「…はい…幹事って飲めないんですよ…」





「だったら…二人で飲みに行くか?」





「でも…部長は、あんまり強くないって言ってませんでした?」





「強くないから、セーブして飲んでたから少しなら大丈夫だ。行くぞ!」





手を差し出すと、とまどいながら重ねられた手を握って。






少し離れた先の、馴染みのバーへ向かった。
< 102 / 161 >

この作品をシェア

pagetop