下弦の月
部長の話を聞きながら間違いないと……




だから………




かなり期待した私がいた。




もしかして…話してるうちに思い出してくれるかもしれないと。




だけど、部長からはそんな様子は感じられなくて。





流れ落ちたのは、




私が、その子です。って言葉ではなく……




涙だった。




だけど、嬉かった。




歳三さんが……そんな風に想ってくれていたんだって、私も役に立てたんだって、改めてわかったから。




きっと、その嬉し涙も含まれていた。







その涙を拭ってくれた時は、



亡くなる間際に、




「笑えって言っただろ。」




と、言われて…手を伸ばして涙を拭ってくれた事を思い出して。





無意識に謝っていた。







待ってますよ?




なんて、言葉は自分に言い聞かせたんだと思う。







まだ…待ってます、思い出してくれるまで。




そういう意味で、部長に訴えたんだと思う。









空に輝く下弦の月。




あの時も今も、下弦の月は私達を眩しいくらいに照らして。




行く末を、見守ってくれているようで。





握られた手に、またひとつに繋げて欲しい。





下弦の月に願いを込めた。
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