下弦の月
「買い物、付き合ってくれねぇか?」






昼食の後に言われて、ショッピングモールにある紳士服のショップにいる。





真っ先に向かったのは、ここで。




部長は…ネクタイが欲しかったらしい。






「選んで?」





「えっ?部長の好みとかわからないですし…」





「俺に似合いそうなやつ。」





「あっ…はい。」





なんだか、妙にドキドキしながら……




いくつか手に取って、部長の首元に当てて見ると。






「なぁ…今くらい、部長ってやめねぇか?」






合わせていた手が止まって、合わさった視線に固まってしまう。






「名前で呼べよ、俺も名前で呼ぶから。」





「部長が、名前を呼んでくれたら…」





なんて、可愛い気のない言葉を発すると。






「月香…」





素直に呼ばれてしまって……顔があっという間に熱を持ち始めた。




言ってしまった手前、





「…柊輔さん…」





名前を言えば、微笑んで。






「ついでに…言葉遣いも普通にして欲しいんだが?」






「頑張って…みる…」




またまた可愛い気のない言葉。




私って…こんなに可愛い気のない女だったのかな?
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