下弦の月
忙しく柊輔さんは、




あの日から新規や一本化を着々と取って来て、




営業部の皆は感嘆の声を上げていた。







そんなある日ーーー。





篠田先輩と同行してる時、





今度、本社から移動して来るという人の話を聞いた。




この時期の移動は異例だが、柊輔さんが部長になってから、



辞めた社員の穴埋めらしい。




まだ、篠田先輩も名前は知らないらしい。




平社員の私達も、幹部クラスも他の営業所の人とは殆ど面識がないから。



名前を聞いてもわからないんだけど。




それから程なくして、




異動して来た人は……私の元彼=渡辺 健吾だった。






大学の時に付き合っていたけれど、




好きなヤツが出来た。と私を振った、3つ上。









「月香、久しぶり。別れて以来だよな?」





お洒落ではない、昔ながらのカウンター席もある居酒屋で。




週末に行われた歓迎会の席で、



私の隣に座って、声を掛けられた。






「そうだね。まさか…健ちゃんが同じ会社だったなんて知らなかった…」





「俺もだよ。綺麗になったし、わからなかった…」





「ありがとう…お世辞でも嬉しいよ。」





「お世辞じゃねぇよ。」






この会話に目敏く、反応して割り込んで来たのは……




健ちゃんの隣に座っていた大島さんだった。
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