下弦の月
「渡辺さんと月香さんって…昔、付き合ってたんですね?」





「ああ…そうだよ。確か、2年くらいだよな?」





私を見て、話を振られて頷くと。





「長かったんですね、もしかして…それ以来の再会ですか?」





「そうだよ。」





健ちゃんが、返答すると。





「月香さんが、綺麗になって焼け没栗に火が付くかもしれませんね?」





私を嫌みな瞳で見ながら、そう言われた。





この場から、抜け出したくて。




健ちゃんに断りを入れて、篠田先輩の隣に移動した。






「なんか…大島が嫌みな瞳で見てたけど大丈夫?」





「大丈夫じゃないです。だから、逃げて来ました…」





頭を撫でて、





「よしよし。まあ…大島は、月香ちゃんが部長と仲が良いから気に入らないのよ。」






「…わかってます…」





「でも、大丈夫よ。部長は…月香ちゃんを好きだと思うから。月香ちゃんも部長が好きなんでしょ?」





「はい?どうして…ですか?」





「どうしても何も…いつも二人とも、目で追ってるわよ。早く付き合っちゃえばいいのに…」





もう、付き合ってます。とは…誰が聞いてるかわからない席では言えなかった。






「…そうですね…」




と、笑顔を作って答えた私の視線の先に居たはずの柊輔さんの姿が

……




見当たらず、席を立って探しに行く。






カウンターの端で、ビールグラスを片手に。




煙草を吸っている、柊輔さんを見つけて。





隣に腰を下ろした。
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