下弦の月
《柊輔》



家に帰ってから、別々にシャワーを浴びて。




ベットで寄り添う、この時がどんな時間よりも安心する。






月香が居なければ、俺は息をすることも…



立つことさえも苦しくなるだろう。




ここ最近まで忙しすぎて疲れて家に帰れば、




俺が帰ってから休めるように気を使って、



飯だけをほぼ毎日のように作りに来てくれていた。




だが、逆に月香の残り香が俺を寂しくさせた。





こんなにも俺は、月香に惚れていたんだと思い知らされた。




月香が支えてくれていたから、



失った分を取り返す事が出来た。




きっと、俺の今の全ては月香なんだ。




誰にも渡す気なんて、全くない。




相手が誰であろうと。





翌朝、まだ陽も昇らないうちに家を出て釣りに出掛けた。




こうして、のんびりと棹を垂らしながら。




過ごす時間が俺は好きで、都会の喧騒からも解き放たれる大切な時間。




今まで、この時間は誰も共に過ごした事なんて一度もない。




月香となら、他愛ない話をしながら過ごすのも悪くない。




この時間に、穏やかさと温かさをプラスしてくれている。






32年間の人生の中で、こんなに愛しいと想った女が居ただろうか。




はじめてと言っても過言ではないくらい、



月香が愛しい。





俺の生涯が終わる、その時まで。




この腕に抱いて。




月香と共に生きる。
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