下弦の月
「大島…そんな事を今は話してるんじゃない。お前のミスだろ?きちんと謝罪するのが筋だろ?さっきから、それを伝えてるんだ。わかんねぇのか?」






「…わかってます!悪いのは全て私です。だから…答えて下さい?月香さんとのこと…」






冷静に、腕組みをして大島さんの瞳を見つめたまま言った柊輔さんに。




どうしても今、答えを聞きたいのか。



怯むことなく、問い質している。






「あのな…今、ここで水上との事は答えねぇ。俺は、水上だけを贔屓していない。ミスは多いがお前の頑張りは認めてる。だからお前に、任せたんだよ。今回の件は、俺からも謝罪しとく。お前もきちんと謝罪しとけ。わかったら…もう下がっていい。」







そう言ってから、視線を外した柊輔さんはパソコンに視線を移した。





大島さんは、納得している様子ではないけれど。




部内を飛び出して行った。





立ち尽くしたままの私の横を通り過ぎる時に、




鋭く私を睨みつけて。









「ちょっと…今の本当?いつから?」






篠田先輩は私のデスクの横から、




聞かれた。






ストンと崩れる落ちるように椅子に座って、





答えに迷う。







「…うん…本当…です…」






迷いながらも、素直に答えていた。




消え入るような声だったはずなのに。




聞き耳を立てられていたからか、皆が私の次の答えを待っていた。






「1ヶ月半前から…」






「どうして言ってくれなかったの?水臭いな…」






溜め息交じりに聞かれて、




すいません。としか答えられない。






私情を仕事場に持ち込みたくなかったし、




社内で人気のある柊輔さんだから、噂が広まって影響が出る事が嫌だった。
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