下弦の月
《柊輔》


潰された約束、




商談を終えて会社に向かった。







疎らに残っていた社員が、帰って行って。





部内には俺と健吾が残された。








それを見計らっていたかのように、





健吾が昨日の事を蒸し返してきた。








「昨日さ、給湯室で大島さんといい感じだったね?付き合ってるのか?」






「付き合ってねぇよ。昨日のあれは…大島がどうしてもって言うからしたけだ…」






「へぇ~。俺も月香とキス出来たけど…柊輔のおかげで。」






「そりゃよかったな、もう二度とさせないけどな。」






「偉い自信だね、俺達のキスがお互いに了承してしたのならどうする?」






「あれは…どう見ても一方的に、お前がしてたようにしか見えなかったけどな。」






「もし…そうだとしても、俺は月香からちゃんと返事を聞くまでは諦めないから。」







「そうか、勝手にしろ!」







勝手にさせてもらうよ。





そう、呟いて。




帰って行った健吾が見えなくなってから、




大きく深い溜め息が漏れた。







明日、朝イチで帰って来るはずの月香。





幸いにも明日は休みだ。





だったら、それまで待ってられるかよ……





仕事なんて家でだって出来る。





今から行けば、家に寄っても日付が変わる前には着ける。








一旦、家に帰ってから車を飛ばした。
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