下弦の月
本社の担当の人は、



なんか雰囲気も話し方も全てが苦手で。




自然と肩はあがり、身体が強張ってしまう。






なんとか無事に、仕事を終えて来る前に手配したホテルに戻ると。





部屋のベットに身体を沈めた。






そのまま意識を手放しそうで、シャワー浴びて着替えないとスーツも皺になってしまう。






シャワーを浴びて、持って来た部屋着兼パジャマに袖を通した。





私は、ホテル備え付けの寝巻きが苦手で。




必ず持って行く事にしている。





髪を乾かし終えた頃、携帯が鞄の中で鳴り響いていた。


電話の相手は、柊輔さんで。






部屋はどこだ?という内容だった。






番号を伝えれば、数分後にチャイムが鳴らされて。






部屋に柊輔さんを招き入れた。







「すまない、突然。だけど…今日どうしても話したかった…」






たぶん、私も疲れているからこそ色々と考えてしまいそうだったから。




来てくれた事は嬉かった。






丸テーブルを挟んだ椅子に向かい合って座って、




備品のコーヒーを飲みながら、口を最初に開いたのは柊輔さんだった。







「大島に告白された、だが…俺は断った。そうしたら…キスしてくれたら諦めると言われてキスをしたんだ。まさか…月香に見られるとは思わなかったが…すまなかった…」







「…わかってる。柊輔さんが、何の理由もなしに他の人とキスなんてしないって。だけど…私は…苦しくて悲しくて…健ちゃんのキスを受け入れてしまったの。私こそごめんなさい。」






頭を下げたと同時に、横から膝を着いた柊輔さんに抱き締められていた。
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