下弦の月
そんな、こんなで……




あっという間に、4月に入って。




年度末の決算の忙しく、慌ただしい日々から開放されたこの日。





営業部にも、男女2名の新人が入って来た。





男の子は、やんちゃそうな感じの爽やかくん。




秋本くん。




女の子は、背の低い私と同じくらいの背丈の可愛いらしい雰囲気を纏った子。




小島さん。






男女それぞれの教育係は、私と健ちゃんになった。






だけど、この二人は。





少しキツく言うと凹み、反発する。





私も健ちゃんも、頭を悩ませていた。





栞ちゃんが入社して、教育係をした時も大変だったけれど。




小島さんに比べたら、呑み込みも早かったし楽だったように思う。





「もう、やってらんねぇ…疲れた…」





「確かに…私も無理…まだ栞ちゃんの方がよかったよ…」






「それ…どういう意味ですか。まあ…私も酷かったし、否定はしませんけど…」






「悪いな…二人とも。自分の仕事も、ろくに出来ねぇよな…」








彼らが入社して、2週間後の週末ーーー。





私と柊輔さん、健ちゃんと栞ちゃんの4人で。




柊輔さんの馴染みのバーに来ていた。






ちょっと、ここでは余談だけどバレンタイン辺りからーー、




健ちゃんと栞ちゃんは付き合い出した。






(話を戻します)






「別に…柊輔が謝ることはないんだけどさ…何回、言っても挨拶ひとつもまともに出来ないってどうよ…どんな育てられ方、されたんだよ…」






「わかる!わかるよ、健ちゃん。小島さんもだから…」






グラスに残っていたカクテルを飲み干した。






「そういえば、最近…部長も苛々してますよね。」





煙草を吸いながら、ビールを飲んだ柊輔さんに、




栞ちゃんが、真ん丸な瞳を向けて言った。





「ああ…秋本も小島も相手が誰だろうとタメ口だしな、すぐに反抗しやがるし…苛々もするだろ…」







「柊輔もよく、我慢してるよな。俺も…我慢してるけど…そろそろキレそう…」






「最近、なんか健吾も月香さんもやつれた気がする…」






「さあ…自分じゃ…わかんないけど…桜が散っちゃう…」






思わず、出た本音。
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