下弦の月
栞ちゃんまでもが、口を挟んだ。







「お尻を触られたくらいなに?月香さんはね、それ以上の危険な目に合わないように…自らセクハラ院長の接待に行ってくれたのよ。月香さんは、いつも周りに気を配いながら自分の仕事もしてるの。」







「だから、なに?馬鹿馬鹿しい。」






「はあ!?馬鹿馬鹿しい?あんたね………」






振り上げられた、栞ちゃんの手首を咄嗟に掴んでいた。






「わかったから、栞ちゃん。殴るのはいけない。」






「だけど…馬鹿馬鹿しいって…月香さんを…」






涙を浮かべながら言ってくれた、栞ちゃん。






後ろに人影を感じて、振り返るといつの間にか健ちゃんがいて。





栞ちゃんの頭を撫でた。






「栞……月香の言う通りだ。手を挙げるのは、よくない。」







「健吾……」






栞ちゃんは、健ちゃんに抱き付いて泣き出した。







「渡辺さんは佐藤さんと、水上さんは部長とデキてるんでしょ?二人とも守られてるだけじゃん!美人な二人だから、いいよね。」







「そうだな、部長も渡辺さんもイケメンだもんな。部下に手を出して。」






その2人の言葉に、ついに健ちゃんがキレた。





今度は、篠田先輩が殴り掛かりそうな感じだったのを静止しながら。






「いい加減にしろ!お前らが、コイツらの何を知ってんだ?」






健ちゃんが、睨みながら言ったそばから、





今まで何も言わずに壁に寄り掛かって、




片膝を立てて座っていた柊輔さんが、





「黙って、聞いてりゃ…ふざけた事ばっか言いやがって。」






と、舌打ちをして立ち上がり。




正座している新人2人の前に、胡座で座った。






完全に目は据わっている。
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