下弦の月
細やかだが祝いだ、と近藤さんが言った言葉により。





私と八重も、その席にいた。








酒が進む中、






「総司と平助が居ねぇのは、寂しいな…」






原田さんが呟いたのを、隣でお酌をしながら聞いて。





また…涙が溢れそうだった。






原田さんに、断りを入れて。






裏庭に逃げるようにやって来て、空を見上げれば。






三日月が闇を照らしている。






泣いちゃいけない、あの人達の前では。




怪しまれてしまうから。





問い詰められても、嘘を突き通す自信なんて私にはない。









大きく息を吐くと、








「月香…」






土方さんの優しく私を呼ぶ声がして、




振り返ると月に照らされた土方さんが私を見据えていた。






「土方さん…どうなされたんですか?」






「お前の姿が広間になかったから、探した…」






「心配してくれたんですか?」






「ああ…俺も外の風に当たりたかったしな、少し飲み過ぎた…」






月明かりに照らされた顔は、ほんのり赤い気がした。






「では、少し風に当たりましょうか。」






そうだな。





頷いた、土方さんとただ…無言で月を眺める。





何も話さなくても、こんなひとときも悪くないと思った。
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