下弦の月
屯所内から、微かに響く騒ぎ声や笑い声。






「ったく…騒がしいな、あんな奴らですまない。」






腕を組んで、月を見上げたまま呟いた土方さんは…





そう言いながらも、微笑んでいるように見えた。






「土方さんは…皆さんが好きなんですね。」






「そうだな…この御時世だ、いつ誰が死ぬかもわからない。けどな、皆…大切な仲間なんだ。彼らが居なければ、新撰組はなかった。俺は、彼らと“誠”の旗の元に闘う。」






「それは…近藤さんのためでもあるんですよね?」






「ああ。正直な所…何が正しいのかわからないんだ。だが…俺は近藤さんが信じた事のために動き、あの人を支えて生きたいんだ。」







「でも、土方さん…辛い時や悲しい時は無理しないで下さいね。私で良ければ…いつでも肩を貸します。」






土方さんを見上げると、視線が交わって。






肩を抱き寄せられ、逞しい胸元に顔がぶつかった。






「ありがとう…月香。」






その時は、頼むな。








土方さんの声が耳元を掠めて、小さく頷いた。





この人の力になりたいから、時が許してくれる限り……






私が出来る事があるならば、側にいたい。








そう、強く思った。
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