下弦の月
その日を境に、私は髪結いの仕事の合間を見て。



屯所に通い始めた。








回復した沖田さんや藤堂さんとは、歳が近いこともあり仲良くなった。






原田さんや永倉さんは、お兄ちゃんのような存在になり。






齋藤さんは、無口だけど私が困っていると助けてくれる。






山南さんとは、お茶を一緒に飲むような関係になっていた。



そんなある日ーーー。


原田さんが巡察の帰りに大きな西瓜を抱えて、帰って来た。






中庭で掃き掃除をしていた私に、




「勝手場に運んでおくから、皆で食べようぜ?月香、切ってくれよ。」



そう、言った…原田さんは少年みたいな笑顔を向けた。



箒を片付けて、勝手場に行くと。










「皆を呼んで来るから、頼んだぜ。そういや、八重に帰りに屯所近くで会ってよ。西瓜に釣られて来るって言ってたな。」






「わかりました、中庭の縁側に持ってきますね。」






私に背を向けた原田さんを見送って、西瓜を切っていく。








切った西瓜を皿に並べていると、平助くんと永倉さんがやって来て……運ぶのを手伝ってくれた。









縁側に座っている斎藤さんと原田さんと、






沖田さんの側に西瓜を置くと、井上さんも来て。






皆で西瓜を頬張り始めたが。








「あれ?土方さんは?」





沖田さんが、原田さんに訪ねると。





「さっき声を掛けたんだけどな…後で行くって言ってたぞ?」






「そう、月香ちゃん。もう一回、呼んで来てよ?」






コクリと頷いて、土方さんの部屋を訪ねる。
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