下弦の月
その頃ーーー八重も現れた縁側では。



「あれ?月香は?」




「土方さんを呼びに行ったぜ。」




「原田さん、わざと月香に呼びに行かせました?」




「俺が行ったんだけどな、来ないから総司が月香に呼びに行かせたんだ。」





「ああ、そういうこと。先に頂いちゃおっ。そのうち、二人仲良く来るわよ。」





「八重さん、やっぱり二人はそういう関係なの?」





「おいっ!総司、そういう関係ってなんだよ?」





「新八さんにはわからないだろうな…」





「どういう意味だっ!」





「俺もわかんねぇ…」






わからない様子の永倉と藤堂を他所に。






「総司、そういう事を聞くのは野暮だ。」






斎藤が沖田にそう…これ以上は無用と言いた気に言ったのだが…






「だって…気になるでしょ?一くんは気にならないの?」





「…別に…気にならない。」





「ふ~ん。僕は、興味あるけどな。土方さんって…月香ちゃんの前では凄く優しい顔をするからさ。僕たちの前じゃ、眉間に皺を寄せて目を吊り上げてるのに…」





「いいではないですか。土方くんだって、心が安らぐ場所が必要でしょう?」


そこへ、いつの間にか山南もやって来ていて。



西瓜を取って、頬張った。






「あら?山南さん!確かに…山南さんの言う通りですよ、沖田さん。」





「つまらないの。」





「総司、君は歳さんをからかいただけだろう?止めない、また怒られるよ。」





「源さんに言われるとな…だけど気になる。」


さすがに、井上に言われると敵わない様子の沖田だけど……どうしても気になるらしい。






「しつこい。」





「一くん、そう言わずに…それとなく土方さんに聞いてよ?」





「何故…俺が聞かねばならん…」





「一くんが聞いたら、答えてくれそうだから。」





「沖田さん、そんなに気になるなら…私が答えられる範囲でなら…答えますよ?」





「教えて?」





「月香は、たぶん土方さんに好意を寄せてるわ。土方さんはわからないけど…心を許してるのは間違いないわね。」





「やっぱり…」





「やっぱりって…佐之は気付いてたのか?」





「新八、二人を見てりゃわかる。」





「俺もわかんなかった…」





「平助はまだまだ…色恋は早いな。」





「面白くなりそう。」








こんな会話がされていた事を、知る由もなかった。
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