下弦の月
「土方さん、月香です。」






「おう、月香か?少し入れ。」






返事をして、部屋に入ると文机で筆を走らせている土方さんの姿があった。






「もう少しで…書き終わるから、終わったら一緒に行こうぜ?」






頷くと、満足そうに微笑んで。





また筆を走らせた。










この人は、本当に仕事人間だって事を屯所に来る度に実感する。








息抜きをして欲しくて、お茶を持って行っても。




一口、飲んでまた仕事をしている。






たまには、のんびりして欲しいんだけど……






受け入れてくれなさそうだから、何も言えない。






だけど、これが新撰組を引っ張ってる土方さんなんだって思う。






この人の背中は、いつも疲れているように見える時がある。




それでも、ごく稀に私に膝枕を要求して。





「少しだけ、寝かせてくれ。」





と、甘える事がある。







心を許してくれているのだろうか?








そんな事を考えているうちに、書き終わったらしく……






「行くぞ。待たせたな。」






と、私の手を取って立たせてくれると。





手を握ったまま…襖を開けて、皆のいる縁側に向かった。








縁側の近くまで来ると自然と離された手、寂しさを感じた。
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