下弦の月
縁側の空いてるスペースに腰を下ろした土方さんの隣に、




私も腰を下ろして西瓜を土方さんに差し出す。





そんな私達に無言の視線が集まる。






「なんだよ?」






その視線に、西瓜を一口食べた土方さんが皆を見回す。






「なんか…恋仲みたいだな…」






原田さんが、ボソッと呟いて。






「本当に…」






ニヤッと沖田さんが、微笑んで。






「何が言いてぇんだ?」






食いつく土方さんに、微笑みを崩さずに。






「仲良いねって話してたんですよ。」






って…今度は私を見て、頭に手を置かれた。






「…そんな関係じゃねぇ…」






「素直に認めないなら…誰かさんの俳句集を皆に…」






「総司、てめぇ…また勝手に入りやがって…返せ!」






立ち上がって奪おうとする土方さんに、






「認めたら…返しますけど…」






なんて、手に持った俳句集を頭の上に挙げて返すまい、と抵抗する沖田さん。






「どっちも…断る!」






この一言で、土方さんと沖田さんの争奪戦の火蓋が切られた。








西瓜を食べながら、複雑な思いで見守る私に。











「本当は…どうなの?」






隣に座っていた八重に聞かれて……






「さぁ…また帰ったら…」






私の答えが出てるからこそ、この場では…そう答えるしかなかった。






愛の告白を皆の前で…なんて恥ずかしくて出来ないよ。










楽しくて、愉快な夏のひととき。




蝉の声が暑い夏に、色を添えてくれていた。
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