下弦の月
「耳まで…真っ赤だぞ?」





「土方さんが…髪に触れるから…です…」






「いいじゃねぇか…好きなもんに触れたくなるのは仕方ねぇだろうが…」






土方さんの顔もほんのり赤く染まったけれど、



漆黒の瞳には私が映っていて。





今にも唇が重なりそうな距離まで、寄せられた顔。





激しさを増す鼓動、慌てて土方さんから離れてしまう。






「離れなくても…いいだろう?」






「すいません…」






「謝らなくていいが…さて、俺は仕事する。」






冷たくなったお茶を飲み干して、御馳走様。とまた机に向かってしまった。






「失礼します。」






と、机に置かれた湯飲みを下げて、声を掛けて…部屋を出る。








こうして、過ごす少ない時間さえも私の気持ちを高ぶらせる。










私は、いつまで……この人の側に居られるのだろうか。
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