下弦の月
いよいよ、京にも雪が降り。





年の瀬も迫り、隊士の殆どは故郷へ帰ったらしい。





私と八重は、残ってる隊士と幹部の皆と屯所の大掃除をしていた。









あまり人が居ないせいか、普段は手狭に感じる屯所も、以外と広いのだと感じた。





幸いにもこの日は、ここ数日…天気が良かったせいで。




雪もすっかり溶けて、大掃除日和だった。










座布団を縁側に並べていると、中庭で屯所の近所の子供達と遊ぶ、沖田さんの姿を見つけた。









「沖田さん!」






声を掛けると、自分の唇に人差し指を当てて。






シーッと私にウィンクをすると、私の側に寄って来て。






「サボッてるなんて…誰かさんにバレたら怒られちゃうから…内緒だよ。」






私の唇に沖田さんの長い指が当てられる。






「ふふ…わかった。たくさん、遊んであげてね?」






「うん、終わったら…こっそり呼びに来て。こっそり戻るから。」






うん、と頷けば、また子供達の所に戻って行った。










史実通りで、子供好きなのは間違いないみたいだけど。




彼の病気は大丈夫なのだろうか。






肺結核。






この時代では、労咳と呼ばれていて死病と言われていたらしい。





現代では治る病だけに、心が痛んだ。





医学の知識も薬の知識もない、況してや自分の事を話す事も出来ず……





わかっているけれど、私は彼に何もしてあげれないから。





史実よりも少しでも、長く生きて欲しい。




そう、願う事しか出来ない。








ごめんなさい、沖田さん。
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