下弦の月
大掃除も終わり、






縁側に座布団を入れに行くついでに沖田さんに声を掛けて、




彼が中に入って来たその時ーー、






空に大きな雪雲が現れて、ハラハラと雪が舞い落ちた。






「綺麗ですね。」






呟いた私に、沖田さんは空を眺めながら。






「今日で今年も終わりだね。年越し蕎麦、食べたいな。何時だったか…作ってくれたよね?今日も作ってよ。」






そう言った沖田さんに、はい。と頷いて。








勝手場に行って、そば粉が残っていないか漁ると。





ここに残っている人数分のそば粉は残っていて、年越し蕎麦を作る事にした。








準備をしている私の所へ、八重と原田さんが現れて。






「おっ!何時だかの蕎麦をまた作ってくれるのか?」






はい。と答えると、






「私も手伝う。」






そう言ってくれた八重に、汁作りをお願いした。





だけど、八重は京の人。





薄味が好みのはず。





あとで、私も江戸風の濃い汁を作る事にした。



好みで食べて貰えばいいから。








原田さんが、皆に声を掛けてくれたおかげで。





皆が広間に集まっていた。








江戸風の蕎麦も、京風の蕎麦も皆は、



美味しい。と食べてくれて、年越し蕎麦はあっという間に無くなった。








片付けを済ませた後、八重は原田さんと斎藤さんと除夜の鐘を打ちに行くと。




出て行って、





永倉さんと平助くんと沖田さんは、島原で年を越すと出て行った。






近藤さんは、京の彼女の所に行き、






山南さんも、珍しく一緒に島原組に加わって出てしまい。






屯所に残ってる幹部は、土方さんだけだった。






僅かな帰郷していない隊士は居るけ

れど、静かになった屯所内が寂しくて。








二人分のお茶を淹れて、土方さんの部屋に向かった。
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