下弦の月
土方さんの部屋の前で、ゆっくりと息を吐いて声を掛ける。





きっと、土方さんは今日も仕事をしていると思うから。






二人分を用意したのは、今日くらい仕事の手を休めて欲しいから。






入れ。






いつもの低い声を聞いて、中に入ると。




予想通り、文机に向かっていた。





大掃除をしたばかりだからか…いつも乱雑に、



座布団の横に積まれている書物は綺麗に積まれていた。










「土方さん、今日くらい仕事の手を休めて一緒に除夜の鐘を聞きませんか?」






ふっと笑った土方さんは、筆の手を止めて。






「そうだな。ちょうど一つ書き終わった所だから、今日はこれくらいで止めとくか。」






はい。






笑顔で頷けば、羽織を着て。






「縁側で茶を飲もうぜ?」






と、襖を開けて縁側に腰掛けた。






私も慌てて、お盆を持って隣りに腰を下ろして。






湯呑みの一つを土方さんに渡した。






「いつ飲んでも月香の茶はうめぇな…」






「ありがとうございます。」










特に、会話はない。






ただ冷たい冬の風に耳を澄ませて、お茶を啜る。









こんな年越しもなかなか粋でいいかもしれない。
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