下弦の月
だけど冬の風は身体をどんどん冷やしていて、身震いをすると。






「寒いんだろ?羽織くらい着て来いよ。」






そう言いながら、立ち上がった土方さんは、






部屋に入ると、羽織を持って来て。




私の肩に掛けてくれた。





土方さんの匂いのする、大きな羽織に袖を通すと。





土方さんに抱き締められているみたいで、体が温かくなってくる。





「ありがとうございます。温かくなってきました。」






「そうか。だがな、もっと…こっちに来い。」






切れ長の瞳に、捕らわれて躊躇いながら少しだけ間を縮めると、






肩に腕を回されて、引き寄せられて。





土方さんの肩に頬が当たった。








そしてーーー、






「来年の大晦日も、お前とこうして過ごせるくらい穏やかだといいんだがな。」






呟くように、伝えられた言葉は私の瞳に涙を誘った。





下唇を噛み締めて、涙を堪えながら。






「…きっと過ごせますよ…」






堪えたおかげで涙が溢れなかった瞳を向ければ、




土方さんの唇が、私の髪に下りて。






「そうだな。来年も一緒に年を越してくれるか?」






「…はい、もちろんです。」





そう、私が土方さんを瞳に捕まえると。






顎に指が添えられて、唇が重ねられた。





「約束だぜ。」





そう言って。






すぐに離された唇に、今度は私が唇を重ねた。






「はい、約束です。」






と、言って。











このキスが、想いが通じ合ったキス



なら良かったのに。






少しだけ切ない。
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