下弦の月
鳥のさえずりで目を開けると、私は土方さんと同じ布団で。




しっかりと腕に抱かれていた。






いつの間に、寝たんだろう?





起きようとしても、土方さんの腕が巻き付いていて起きられず。





身を捩ると、土方さんの腕がピクッと動いて。





頭上から、





「起きたのか?」





寝起きの掠れた声がした。






普段の彼の声とは違う、色っぽい甘い声で。



心臓は激しい鼓動を刻み始めた。









腕の中で、小さく頷けば。






「昨夜は、眠れなかったんだが…今夜は…月香がいてくれたから眠れた。」





「…よかったです。」





「ありがとな。」






土方さんは自分の腕から私を開放すると、起き上がって。






文机に行くのを、目で追いながら私も身体を起こした。






文机に置かれた、山南さんが見つけてくれた簪を私に差し出した。









「昨夜、寝苦しいだろうと帯をほどいた時に懐から出て来たぞ。綺麗な簪だな、月香に似合うだろう。大切な物なのか?」







「はい、山南さんが…私に。と…沖田さんに預けたそうです…」







「そうか…大切にしろ。」






私の手に握らせてくれせてくれた。







それから身支度を整えて、八重の家まで土方さんは送ってくれた。





その帰り道、私達はどちらともなく、




指を絡めて繋いでいた。






家の前で、







「またな。」







背中を向けて、片手を上げた土方さんの背中に。





消え入るような声で、呟いた。






好きです……と。
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