下弦の月
その声を聞いていたらしい、八重の声が戸口から聞こえた。





「本人に、直接…伝えればいいのに…」







「…っ…まだ…言えない。伝える時は、私が未来から来た事を伝える時。」







「そう…決めてるのね、てっきり帰って来なかったから契りを交わして恋仲になったのかと、思ったわ。」







「…それは…家の中で…」






八重を押し込んで、何故か向かい合って。





畳に座って、全てを話した。







「土方さんも、月香を好いてるのね。」







「まさかっ…それは…ないよ…」







「どうかしら?まぁ、本人に確かめる事ね。」







「私は…彼の力になりたいの。彼のこれからも、私は知ってる。だから、最後まで彼の側で支えつづけたいの。」







「月香……もしかして…簪、見つかったの?」







「うん、山南さんが見つけてくれて…沖田さんに預けたの。」







「そう…いつかは帰っちゃうんだね、寂しくなるね…」








「大丈夫。私が帰るのはまだまだ先だから。」





「本当?」






うん。と頷くと、私を抱き締めて。







よかった。と優しく笑ってくれたようだった。







「月香は、強いね。大好きよ、月香。」







って、言って。
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