下弦の月
休む暇もないくらい、働いている土方さん。





たぶん、鳥羽伏見の戦い以来…ちゃんと休んでいる姿なんて見た記憶がない。





さすがに、私は…休むようにお願いしたが。





「今は…休んでる暇なんてねぇ!」





そう、一喝されてしまったが…引き下がらずに。






「ならば、いつになったら…休んでくれるんですか?」





と…服を掴んでいた。





だけど、その手を取られて。





「うるせぇな!もう少しだけ…あと少ししたら…休むから、今はこれ以上…言うな!」





握る手の力が強くして、頼むから。と瞳で訴えられて。




渋々ながら…頷いた。





「わかりました。絶対ですよ?」





「ああ…」






面倒臭そうな返事を返すと、握っていた手に唇を落とされた。






だが……次の日、江戸城は無血開城されて。





私達は、江戸を脱走して先鋒部隊と宇都宮に向かった。






土方さんが嘆願した願いは…叶うことなく、





近藤さんは、板橋処刑場で斬首された。
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