下弦の月
それからーーー。





旧幕府軍は壬生の戦いに向かうが敗走を余儀なくされ、





再び宇都宮で対する事になった。









陣中で怪我人の世話に追われる私の元へ、





思いも寄らない人が…自ら足を引き摺って現れた。








「…土方さん!」







「…月香…すまねぇ…足を…やられちまった…」







「…見れば…わかります…出血が酷いので…まずは止血を…」






持っていた晒を裂いて、出血している太股に巻いている手が…




僅かに震えていた。





さっきまでの怪我人の世話では震えなかった手が…





今は…土方さんだから?






この人が、こんなに大量の血を流している姿を初めて見たから?







巻き終わっても、震える手に土方さんの血だらけの手が重なった。







「大丈夫だ…俺は…足を…殺られたくらいじゃ…死なねぇよ…」






痛々しいながらも、しっかりとしたいつもの声音に……




手の震えも止まっていた。









こんな状態の土方さんを、これ以上…




闘わせるわけにいかないと判断した大鳥さんは、





この本陣に先立って会津に護送される事となった。
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