下弦の月
会津に着くと、




出迎えてくれたのは斎藤さんと島田さんだった。








「話は聞いています…お怪我は大丈夫ですか?」






土方さんなら…絶対に大丈夫、と言うから。




彼よりも先に、






「大丈夫じゃありません、今は…闘える状態ではないので…完治するまで休ませたいと思います。」






斎藤さんに、そう答えると。






「…っ…月香!俺は…大丈夫だ。闘える!」







なんて…やっぱりな事を言うから、




私も折れる事は出来ない。






「駄目です!ここの指揮はまだ、斎藤さんに任せて下さい。そんな足で…戦地に行っても足手纏いなるだけです。」







「なんだと!?」






「そんな…怖い顔をしても、駄目です!約束しましたよね?もう少ししたら休んでくれるって。だから…これを機に休んで下さい!」







「…っ…わかったよ、休めばいいんだろ!」






折れた土方さんに、頷いて笑顔を返すと。







「月香も…言うようになったのだな。それくらい、キツく局長に言ってくれる人が側に居るなら…安心だな。」







「ええ…安心ですね。」






斎藤さんも島田さんも、微笑みながら…




私に向かって、そう言うから。





今のが…痴話喧嘩みたいで、今更だけど恥ずかしくなって。




土方さんを見ると、顔を真っ赤にして大きく溜め息をついた。







「近くに宿場町がありますので…そちらで療養して下さい。」







「ああ…わかった…すまねぇが、あと暫く指揮権は任せたぜ…斎藤。」






「…はい、お任せ下さい。島田…案内を頼んだ。」









島田さんに連れられ、土方さんと私は近くの宿場町の宿に身を寄せる事になった。
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