下弦の月
《土方 歳三》


年が明けてからは、




雪が更に積もり、雪化粧した蝦夷の地。







整備を整えることに、徹した。









「ただいま。」






「おかえりなさい。」







部屋に帰ると、変わらずに迎えてくれる月香が愛しい。







俺の今までの人生は、近藤さんと新撰組と共に合って、





全てになっていたから…近藤さんに託された新撰組を率いる役目がほぼ、





終わった今……俺はいつ死んでも悔いはない。





だが、心残りがあるとするなら月香のことだ。






今の俺は…間違いなく、月香が生きて欲しいと言えば…




迷いなく、月香を選ぶだろう。





だからこそ、決められた死期に死なせてくれるだろうか。





俺が死んだ後、ちゃんと元の時代に帰ってくれるだろうか。





そんな事を日々……考えてしまう。




口に出せば、月香は揺らぐだろうから決して口には出せないが。










お茶を淹れて来てくれると、




「夕飯が出来たら呼びに来ますね。」





と、出て行った月香と入れ替わるように。





大鳥さんが部屋を訪ねて来た。
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