恋歌-Renka-
1年が経ち小学校
4年生になった………
今だにあの女の子が
見つけられずに
今日も学校帰りに
別の道場へと向かう。
あの一件以来
クラスの男子達は
俺をいじめなくなった。
「やっぱいないか………もう諦めようかな……でもな………」
草の茂みに隠れて
中の様子を伺っていると
「何してるの?」
急に声をかけられた
「うわぁっ!?」
驚いて尻餅をつく。
「あ、君は。あのいじめられっ子?」
たった1年しか経ってないのに
どこか大人びた彼女は
笑いながら俺を見つめる
あまりの恥ずかしさで
真っ赤になった顔を
隠すように俯いた。
「でも、よくここが分かったね!私、道場の名前も自分の名前教えてなかったのに。」
「あ、そうだ!君の名前!何て言うの?」
「私は花音。冬院 花音……君は?」
と手を差し出す。
俺はその手をとり
立ち上がって
「僕は涼太! 帝 涼太!」
笑顔で答える
「そう、涼太くんか。よろしくね、涼太くん」
再び手を差し出す花音
俺はその手を思い切り握って
「こちらこそ、よろしくっ!」
と微笑んだ。
これは俺にとって
小さな奇跡だった。